家庭用エスプレッソマシンの世界で、長年にわたり「最強の入門機」「価格を超えた本格派」として愛され続けているGaggia Classic(ガジア クラシック)。その最新進化版が「Gaggia Classic Evo Pro」です。
なぜこのマシンは、同価格帯の他のマシンと一線を画し、「本物」と呼ばれるのでしょうか?その答えは、外観の美しさやシンプルな操作性だけでなく、業務用マシンから受け継いだ「内部構造」にあります。
この記事では、Gaggia Classic Evo Proの心臓部である内部構造を徹底的に解剖し、特に「Evo(Evolution=進化)」で何が変わったのか、その核心であるボイラー、グループヘッド、そして三方弁の秘密に迫ります。
1. 熱安定性の要:「真鍮製グループヘッド」と「58mmポルタフィルター」
Gaggia Classic Evo Proの内部構造で最も特筆すべき点の一つが、「真鍮(ブラス)製」のグループヘッドを搭載していることです。
グループヘッドとは、ポルタフィルターを装着し、熱湯をコーヒー粉に供給するエスプレッソマシンの「顔」とも言える部分です。安価な家庭用マシンでは、コスト削減のためにアルミニウムやプラスチックが使われることもありますが、Gaggiaは伝統的に真鍮を採用しています。
なぜ真鍮が重要なのか?
真鍮はアルミニウムに比べて熱容量が大きく、蓄熱性に優れています(冷めにくい)。エスプレッソ抽出は、90℃前後の熱湯を安定して供給し続けることが味の再現性に直結します。真鍮製の重厚なグループヘッドは、ボイラーから送られてきたお湯の温度を抽出中も安定させ、温度低下を防ぐ「ヒートシンク」のような役割を果たします。
さらに、装着するポルタフィルターも業務用マシンと共通規格である「58mm」サイズを採用。これもグループヘッド同様に重厚な真鍮製(クロームメッキ仕上げ)であり、グループヘッドと一体となって高い熱安定性を実現しています。
この「58mm真鍮グループヘッド」こそが、Gaggia Classicが家庭用でありながらプロの領域に足を踏み入れている最大の理由です。
2. 業務用マシンの証:「3ウェイ・ソレノイドバルブ(三方弁)」
Gaggia Classic Evo Proの内部構造を語る上で、絶対に欠かせないのが「3ウェイ・ソレノイドバルブ(三方弁)」の存在です。
これは、多くのエントリークラスのマシンには搭載されていない、中級機以上の特徴とされる部品です。電磁弁(ソレノイド)によってお湯の流れを3方向に切り替える役割を持ち、以下の2つの大きなメリットを生み出します。
- メリット1:抽出後の圧力解放と「乾燥したパック」
- エスプレッソ抽出時、グループヘッド内部は約9気圧という高圧状態にあります。抽出を止めると、三方弁が作動し、この内部に残った余分な圧力(お湯)を瞬時に排出トレイへと逃がします。
この機能により、抽出直後にポルタフィルターを外してもお湯が噴き出すことがなく、フィルターバスケット内のコーヒーかす(パック)は余分な水分が抜けて乾燥した状態になります。これにより、ノックボックスに「カラン」と綺麗にパックが落ち、日々の清掃性が劇的に向上します。 - メリット2:「バックフラッシュ」による本格的な清掃が可能
- 三方弁が搭載されていることで、「バックフラッシュ(逆洗浄)」と呼ばれる専門的なクリーニングが可能になります。これは、専用の洗剤とブラインドフィルター(穴の開いていないフィルター)を使って、グループヘッド内部からバルブにかけてのお湯の通り道を「逆流」させて洗浄する方法です。
これにより、内部に蓄積したコーヒーオイルや微粉末を徹底的に除去でき、マシンの寿命を延ばし、常にクリーンな状態で美味しいエスプレッソを淹れ続けることができます。
この三方弁の搭載こそが、Gaggia Classicを単なる「家庭用マシン」ではなく「小型の業務用マシン」たらしめている核心的な構造です。
3. 「Evo」の核心:新型「コーティング・アルミニウムボイラー」
Gaggia Classic Evo Proの心臓部であるボイラーは、伝統的に「アルミニウム製」のシングルボイラーを採用しています。素早く加熱できる(起動が早い)というメリットがありますが、旧モデル(Classic Pro以前)では、アルミニウムの腐食やスケール(水垢)の付着が長期使用における課題とされていました。
そこで「Evo Pro」モデルで施された最大の「進化」が、このボイラーの内部処理です。
Evo Proのアルミニウムボイラーには、「Excelia」と呼ばれる特殊な非粘着性・耐腐食性コーティングが施されました。これは、食品衛生法(FDAや欧州の規制)にも準拠した安全なコーティングであり、アルミニウムが水やコーヒーに直接触れるのを防ぎます。これにより、理論上は以下の効果が期待されます。
- 耐腐食性の向上:アルミニウムの酸化や腐食を防ぐ。
- 耐スケール性の向上:水垢(カルシウムなど)がボイラー内部に固着しにくくする。
知っておくべき点:コーティングに関する議論
この新しいコーティングはGaggiaの大きな改良点ですが、一方で、海外のユーザーコミュニティ(特に2023年製造の初期ロット)において、「ボイラー内部のコーティングが剥がれる(Flaking)」という問題が少数報告されたことも事実です。これは特定の製造バッチの問題であるとメーカー側からアナウンスされていますが、Gaggia Classic Evo Proの内部構造を理解する上で知っておくべき情報と言えます。
このボイラーが、前述の「真鍮グループヘッド」と接続され、抽出とスチームの両方を(切り替え式で)担うのが、Gaggia Classicのシンプルなシングルボイラー構造です。
まとめ:伝統と進化が共存する内部構造
Gaggia Classic Evo Proの内部構造をまとめると、以下のようになります。
- 熱安定性を担保する「真鍮製グループヘッド(58mm)」
- 業務用マシンと同じ機能を持つ「3ウェイ・ソレノイドバルブ」
- 耐久性向上を目指し進化した「コーティング・アルミニウムボイラー」
- 高圧を供給する「バイブレーションポンプ」
- ラテアートを可能にする「プロ仕様スチームワンド」
Gaggia Classic Evo Proは、エスプレッソ抽出の根幹である「熱安定性」と「圧力管理」において、長年培われてきた伝統的なプロフェッショナル仕様の構造(真鍮グループヘッド、三方弁)を堅守しています。その上で、弱点とされてきたボイラーの耐久性を「コーティング」という新しい技術で「進化」させようとしたのがEvo Proモデルです。
この妥協のない基本設計こそが、Gaggia Classic Evo Proが世界中のコーヒー愛好家から絶対的な信頼を寄せられる理由なのです。


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